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ツキノワグマ
被害情報あり
哺乳類 ・ 狩猟鳥獣

ツキノワグマ

胸の月が輝く森の賢者

基本分類

和名
ツキノワグマ(日本産亜種:ニホンツキノワグマ)
学名
Ursus thibetanus(日本産亜種:Ursus thibetanus japonicus)
分類
哺乳綱 食肉目 クマ科 クマ属
狩猟鳥獣としての区分
獣類。 鳥獣保護管理法上の狩猟鳥獣。 令和6(2024)年4月、四国地域個体群を除きヒグマとともに「指定管理鳥獣」に追加指定された。 ただし四国地域個体群は個体数が極めて少なく絶滅の危機にあるため、四国4県では平成6(1994)年以降、狩猟による捕獲が禁止されている。

生態

分布
世界的には東は日本から西はイランまでのアジア地域に分布し、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストではVulnerable(危急種)に分類される。 日本国内では本州(千葉県を除く)と四国に生息し、九州では1940年代頃に絶滅したと考えられている。 日本産亜種のうち四国・中国・紀伊半島・下北半島の各地域個体群は、環境省レッドリスト(2002年)で「絶滅のおそれのある地域個体群(LP)」とされる。 1978年には全国の分布メッシュの28%で確認されていた分布が2003年には34%に拡大し、2013年の調査ではさらに山麓部まで拡大していることが示されている。
生息環境
山麓から標高3,000mの高山帯まで、多様な森林帯を利用する。 特にブナ・ナラ類の落葉広葉樹林の分布と地理的分布がよく一致していることが知られている。
体サイズ
頭胴長は110〜180cm程度とされる。 体重は地域差が大きく日本産個体は大陸産に比べて小型である傾向があり、栃木県日光足尾山地の成獣はオス71kg・メス42kg、東京都奥多摩山地ではオス62kg・メス36kg程度と報告されている。 ヒグマ(オス体長約2.0m・体重150〜400kg)と比べると明確に小型でスリムな体格である点が最大の識別点。
活動時間
基本的には昼行性で、黎明薄暮に活動が活発になる。 春〜夏期に比べて秋期の方が一日の活動時間が長くなる傾向が報告されている。
食性
雑食性だが、肉食よりも植物食に偏っている。 春は草本類・木本の新芽や新葉、夏は草本・ベリー類に加え社会性昆虫、秋は本州中部ではブナ類・ナラ類の堅果が主食となる。 堅果類が少ない年には植林された針葉樹の樹皮剥ぎを行うことが報告されており、初夏には出産直後のニホンジカの仔を襲って捕食することもある。 糞分析等から90種の果実を利用することが知られ、種子散布者としての役割も論じられている。
行動特性
母親と幼獣(生後2〜3年は母親と生活)以外は基本的に単独で生活する。 兄弟同士が分散後に一時的に行動を共にすることや、交尾期(6〜8月)にオスとメスが一時的にペアを作ることはあるが、恒常的な群れは形成しない。 テリトリーは持たない一方、堅果類が豊富に実る林分からオスがメスを排除する競合的な行動も観察されている。 全ての齢・性で木登りが得意で、樹上で枝を折り込んで巣状にした「クマ棚」を作る。 冬期(おおむね11月頃〜翌4月頃)には冬眠し、受精卵の着床が冬まで遅延したのち冬眠中の1〜2月に出産する。 ブナ科堅果類の凶作年には生活圏への出没が急増する傾向がある。

狩猟情報

猟期
全国標準の狩猟期間は11月15日から翌年2月15日までだが、地域個体群の状況(絶滅のおそれのある個体群か、個体数水準がどの段階か)によって捕獲の可否・上限が大きく異なる。 四国4県では平成6(1994)年以降、狩猟による捕獲が禁止されている。 猟期・捕獲規制は都道府県により異なるため、必ず自治体の最新情報を確認すること。
主な猟法
銃猟が中心。 ヒグマと同様、法律上ツキノワグマの捕獲のためにわなを使用する方法は狩猟における禁止猟法とされている。 指定管理鳥獣捕獲等事業や有害鳥獣捕獲など都道府県知事等の許可に基づく捕獲では例外的な取り扱いがあり得るが、詳細は自治体ごとの制度により異なる。 銃猟については、3発以上の実包を装填できる弾倉を持つ散弾銃や、口径5.9mm以下の小口径ライフル銃の使用が禁止されている。

判別ポイント

ヒグマとの違い: 分布はツキノワグマが本州・四国のみ、ヒグマが北海道のみで重複しないため、生息地の情報が最も確実な一次的判別基準になる。 体格はツキノワグマが中型(頭胴長110〜180cm、日本産オス平均60〜70kg程度)、ヒグマは大型(オス体長約2.0m・体重約150〜400kg)。 肩の筋肉が盛り上がる「肩コブ」はヒグマで顕著だがツキノワグマは目立たずスリム。 胸部の模様はツキノワグマに三日月型の白斑があるが、欠如・不明瞭な個体もありこの一点のみでの判断は避けるべきとされる。 食性はツキノワグマの方が植物食に強く偏る。 いずれの種も人身被害につながる危険性が高いため、目撃時は種の同定よりもまず安全確保を優先することが基本とされる。

人との関わり

農林業・生活被害
クマ類(ヒグマ・ツキノワグマ合算の全国値)による人身被害は令和5年度に197件(218人、うち死亡6人)に達し、月別統計のある平成18年度以降で最多ペースとなった。 ツキノワグマの出没件数(本州以南)は令和5年度4〜12月累計で23,669件と過去最多を記録し、東北地方が約6割を占めた。 背景として令和5年の東北地方でブナが軒並み「大凶作」となったことが挙げられている。 ただしツキノワグマ単独の全国被害金額の公表データは確認できていない。
利用
出没・被害の増加に伴い有害鳥獣として捕獲される個体が増えており、駆除個体の有効活用としてジビエ利用が推進されている。 秋田県阿仁地方のマタギには、捕獲した熊を集落全体で分かち合う「ケボカイ」という伝統的な儀礼が今も伝えられている。 熊の胆嚢(熊胆)は冬眠による胆汁の濃縮で良質とされ、伝統的に高価な漢方薬として珍重されてきた。 もっとも、シカ・イノシシと異なり農林水産省統計上クマ類は「その他鳥獣」に区分されることが多く、全国的なジビエ利用量の内訳は確認できていない。
豆知識
四国地域個体群は1994年以来30年以上にわたり狩猟による捕獲が全面禁止されているにもかかわらず、2024年度時点の推定個体数は最低26頭程度にとどまり、回復の兆しが見られない深刻な状況にある。

出典

  1. 環境省「クマ類の生息状況、被害状況等について」(取得日: 2026-07-04
  2. ウィキペディア「ツキノワグマ」(取得日: 2026-07-04
  3. 山﨑晃司(東京農業大学)「ツキノワグマの基礎的な生態の理解」(取得日: 2026-07-04
  4. ツキノワグマ生態NAVI「日本にツキノワグマは何頭生息しているのか?」(取得日: 2026-07-04
  5. 環境省「クマに関する各種情報・取組」(取得日: 2026-07-04
  6. 群馬県「群馬県における狩猟のルール」(取得日: 2026-07-04

猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。

被害と対策

ツキノワグマによる被害は農業被害と林業被害の両面で深刻です。 農業面では果樹(リンゴ、ナシ、ブドウ等)への被害、養蜂業での蜂蜜・巣箱被害、トウモロコシ等農作物への食害が発生しています。林業面ではスギやヒノキなど人工林の樹皮を剥ぐ「クマ剥ぎ」被害があり、地域で数千万円規模の被害となっています。人里近くへの出没による人身事故のリスクも高まっており、注意が必要です。

年間被害額:約4億円データ年度:2023年度
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