基本分類
- 和名
- タヌキ(日本産は形態によりホンドタヌキ・エゾタヌキの2亜種に分類されることが比較的広く知られている)
- 学名
- Nyctereutes viverrinus(日本産)。大陸産はNyctereutes procyonoidesとされ、両者を別種とする説と同種の亜種とする説があり、分類学上の扱いは文献により異なる。
- 分類
- 哺乳綱 食肉目(ネコ目)イヌ科 タヌキ属
- 狩猟鳥獣としての区分
- 獣類。 環境省が指定する狩猟鳥獣46種(獣類19種)の1種。
生態
- 分布
- 北海道から本州、四国、九州まで日本全国に広く分布する。 世界的には本来、極東地域にのみ自然分布する動物で、日本のほか朝鮮半島、中国、ロシア東部、ベトナムに分布し、毛皮養殖からの逸出等によりヨーロッパにも定着している。
- 生息環境
- 湖沼などの水辺で下生えの深い環境を好むとされる一方、森林、農地、里山から都市部の緑地・住宅地、神社仏閣の境内まで幅広い環境に適応する。 休息場所としては神社仏閣の床下や空き家、キツネ・アナグマが掘った巣穴(古巣)を再利用することが知られている。
- 体サイズ
- 尾を含めて50〜70cm程度、体重は平均4kg程度とされる。 体長50〜68cm、尾長12.5〜25cm、体重4〜6kg(秋季は6〜10kg)とする記述もあり、季節により体重変動が大きい。 外見的特徴は目の周辺を覆う黒い部分(アイマスク)と、背中から前肢にかけての黒いバンド。
- 活動時間
- 活動は主に夜間だが、昼間も活動する。 人間の影響が少ない環境では昼間の活動がより多くなる傾向がみられる。 なお疥癬症に感染した個体は、健常な個体よりも高い割合で昼間に活動することが調査で示されている。
- 食性
- 雑食性で、齧歯類、鳥類やその卵、両生類、魚類、昆虫、甲殻類、軟体動物、動物の死骸、植物質など非常に幅広いものを食べる。
- 行動特性
- 繁殖は2月頃から始まり5〜6月が出産のピークで、産仔数は1〜7頭(平均5頭)。 生まれた子は全身が真っ黒でクマの子と間違われることがある。 交尾から子育て終了までペアを形成する「夫婦単位」で生活し、イヌ科の中では雄も子育てに関与する点が特徴で、大規模な群れは作らない。 複数の個体が特定の場所に糞をする「ため糞」の習性があり、1頭の行動圏内に約10か所存在し、生活エリアの境界のマーキングや個体間の情報交換の場と考えられている。 非常に臆病で警戒心が強く、危険を感じると動かなくなる「擬死」(たぬき寝入り)と呼ばれる防御反応を示す。 木登りなど高所への進入は得意ではない。
狩猟情報
- 猟期
- 全国標準の狩猟期間は11月15日から翌年2月15日までである。 猟期・規制は都道府県により異なるため必ず自治体の最新情報を確認してください。
- 主な猟法
- 銃猟(散弾銃等)およびわな猟(箱わな・くくりわな等)が中心である。 網猟は主に鳥類を対象とする猟法であり、タヌキの捕獲実務では一般的ではない。
判別ポイント
アナグマ・ハクビシンとの判別が重要。 タヌキ(イヌ科)は茶色い頭に黒い頬のアイマスクを持ち、尾は太くやや短めで縁に黒っぽい毛が生え、足跡は4本指で全体に丸くネコに似るが爪痕が明瞭で、木登りは苦手。 アナグマ(イタチ科)は目の上下が黒く、尾は短く模様がなく、足跡は5本指で爪が長く目立ち、掘ることが得意。 ハクビシン(ジャコウネコ科)は鼻先から額にかけて白い縦線があり、尾は他3種より明らかに長く、足跡は5本指で爪痕が不明瞭で、木登り・高所侵入が得意。 被害現場の散らかり方も手掛かりになり、タヌキは獲物や作物をその場で食べず、噛み癖があり意外と荒っぽくどこかに運んでから食べるとされる。 なお、夜間の目撃情報では体格の近い中型犬(野良犬・徘徊犬)とタヌキが混同される場合があるとされるが、これを体系的に裏づける調査データは確認できず、不明瞭な点があることを明記する。
人との関わり
- 農林業・生活被害
- 農林水産省の資料では、タヌキ・ハクビシン・アライグマを合わせた「中型獣類」による農作物被害額が令和4年度で13億円とされているが、タヌキ単独の全国集計値は公表資料からは確認できない。 スイカの食い散らかしやトウモロコシの食害などの個別事例が報告されている。
- 利用
- 一般的な利用は確認できない。 タヌキ肉は雑食性を反映した独特の臭みがあり個体差が非常に大きいため、適切な血抜き・脂肪除去・下処理が重要とされる。 大正〜昭和期にかけて動物愛護意識の高まりとともに「食べる対象」から「愛される存在」への転換が進んだとされ、現在タヌキ料理を提供する飲食店はほぼ存在しないが、一部の狩猟コミュニティや地域では伝統料理として受け継がれている。
- 豆知識
- 危険を感じると動かなくなって死んだふりをする「擬死」(たぬき寝入り)という防御反応で知られる。 「ため糞」は単なる排泄ではなく、生活エリアの境界を示すマーキングであり、個体間の情報交換の場とも考えられている。
出典
- 環境省「狩猟鳥獣の法的な定義等」参考資料1(取得日: 2026-07-04)
- Wikipedia「タヌキ」(取得日: 2026-07-04)
- 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】」2-3 タヌキ(取得日: 2026-07-04)
- J-STAGE「東京都南多摩地域における疥癬症に感染したタヌキの活動時間」(取得日: 2026-07-04)
- 環境省「狩猟鳥獣の保護を目的とした狩猟期間の制限、捕獲規制及び猟法の制限」参考資料2(取得日: 2026-07-04)
- 東京都「アライグマ・ハクビシン・タヌキ・アナグマの見分け方」(取得日: 2026-07-04)
- 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について」(取得日: 2026-07-04)
猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。
被害と対策
タヌキによる農業被害は全国の農村部で発生しており、主に野菜類や果樹への食害が報告されています。 トウモロコシ、スイカ、メロン等の果菜類への食害、ブドウや柿等の果樹への被害、イモ類の掘り起こし被害などが主な農業被害です。 また、住宅地では生ゴミを荒らす、庭の野菜や果実を食害する、糞害による衛生問題などの生活被害も発生しています。
年間被害額:約1.2億円データ年度:2023年度
出典:
農林水産省「野生鳥獣による農作物被害状況」環境省「鳥獣保護管理基本指針」
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