基本分類
- 和名
- ヌートリア(別名:沼狸〈しょうり〉)
- 学名
- Myocastor coypus
- 分類
- 哺乳綱 ネズミ目(齧歯目)ヌートリア科ヌートリア属(本種のみでヌートリア属を構成)
- 狩猟鳥獣としての区分
- 獣類。 環境省が指定する狩猟鳥獣46種(獣類20種)の1種であるとともに、2005年6月に外来生物法に基づく特定外来生物(第一次指定種)に指定されており、生きた個体の飼養・運搬・譲渡等が原則禁止されている。 都道府県によっては捕獲が禁止されているほか、捕獲数が制限されている場合がある。
生態
- 分布
- 自然分布域は南米中〜南部(ブラジル南部、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン、チリ)。 日本へは毛皮採取を目的として導入され、最初の記録は1907年のドイツからの上野動物園への輸入、1939年にはフランスから150頭が輸入され毛皮獣として飼育が奨励された。 飼育個体の逃走・遺棄により野生化し、現在は福島・埼玉・福井・岐阜・静岡・愛知・三重・奈良・滋賀・京都・大阪・兵庫・岡山・鳥取・広島・島根・山口・香川・愛媛など、東海以西の西日本各地に定着している。 寒冷地への適応性は低く、この点が分布が西日本中心である一因とされる。
- 生息環境
- 流れの緩やかな河川・湖沼・ため池・水田周辺の水辺に生息し、岸辺の土手や中洲に穴を掘って巣とする。 巣穴は細長く複雑で総延長10m以上に及ぶこともあり、水上には「プラットホーム」と呼ばれる浮き巣を作ることもある。
- 体サイズ
- 頭胴長40〜70cm、尾長約30〜39cm、体重5〜10kg程度で、日本で見られる齧歯類としては最大級。 雄がやや大型。
- 活動時間
- 基本的には夜行性で、朝夕の薄明薄暮時に最も活発に採食するが、侵入地では日中に活動する個体も見られるなど可塑性の高い活動パターンを示す。 昼間は巣穴や草むらで休んでいることが多い。
- 食性
- 草食性で、ホテイアオイ、ヨシ、ヒシ、マコモなどの水生植物を中心に、陸上の植物も含め幅広い植物を採食する。 稲やオオムギ、イチゴ、スイカ、キャベツなど農作物への食害も広く報告されている。
- 行動特性
- 水辺に雌雄のペア、または1頭のオスと血縁関係にある複数の成熟メスおよびその子からなる2〜13頭程度の家族的な小集団を形成して生活する。 若いオスは分散して単独傾向を示す。 泳ぎが得意で5分間ほど水中に潜っていることができ、後ろ足には水かきがある。 年に2〜3回出産し、1回に1〜13頭(平均5頭前後)を産み、生後3〜10か月で性成熟に達するなど繁殖回転が速い。
狩猟情報
- 猟期
- 全国標準の狩猟期間は11月15日から翌年2月15日まで、北海道は10月1日から翌年1月31日までとされる。 猟期・規制は都道府県により異なるため、必ず自治体の最新情報を確認すること。
- 主な猟法
- わな猟(ニンジン・ジャガイモ等を餌にした金属製箱わな)が中心。 捕獲には網・わな猟の狩猟免許が必要。 銃猟が行われる場合もあるが、水辺・農地に生息するため安全面からわな猟が主体となる傾向がある。
判別ポイント
尾の長さ(ヌートリアは約30cm前後)、前歯(門歯)の目立つオレンジ色、水かきが後ろ足のみにある点が特徴。 日本国内に野生個体が生息しないカピバラ(体重35〜65kg程度でヌートリアより大幅に大きく、ほとんど尾がない)と話題として混同されることがあるが、実際の誤認捕獲リスクは低い。
人との関わり
- 農林業・生活被害
- 稲・オオムギ等の農作物のほか、イチゴ・スイカ・キャベツなどの野菜・果実への食害が報告されており、特に川や用水路に近い畑・水田で被害が多発する。 堤防・水田の畦・ため池への巣穴掘削による構造物被害も主要な被害の一つ。 兵庫県の調査(2007年)では、県内4,195集落のうち2,349集落でヌートリアの目撃または被害が確認され、同年の有害捕獲数は1,007頭であった。 絶滅危惧種であるベッコウトンボの生息地破壊、貝類の減少を通じた生態系への影響も報告されている。
- 利用
- 一般的な食用利用は普及していないが、有害鳥獣として捕獲された個体をジビエとして活用する取り組みが一部地域で報告されている。 2025年には静岡県磐田市で、有害鳥獣駆除により捕獲したヌートリアをジビエとして活用する研究が行われたと報じられた。 ただし、こうした利用はまだ一般化した文化とは言えず、限定的な取り組みの段階である。
- 豆知識
- 1930年代に毛皮採取を目的として日本に導入された経緯を持ち、当時は毛皮獣としての飼育が奨励されていた。 単独性の齧歯類が多い中、ヌートリアは血縁の雌を中心とした家族的な小集団で暮らす、比較的社会性の高い生態を持つ点が特徴的である。
出典
- 国立環境研究所 侵入生物データベース「ヌートリア」(取得日: 2026-07-04)
- ウィキペディア「ヌートリア」(取得日: 2026-07-04)
- 加西市「ヌートリアの生態」(取得日: 2026-07-04)
- 江草佐和子・坂田宏志「兵庫県におけるヌートリアの農業被害と対策の現状」陸水学雑誌70巻3号 p.273-276(2009年12月)(取得日: 2026-07-04)
- 環境省「狩猟制度の概要」(取得日: 2026-07-04)
猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。
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