基本分類
- 和名
- ノイヌ(野犬・野生化したイエイヌ)
- 学名
- Canis lupus familiaris(イエイヌ)。「ノイヌ」は独立した種・亜種ではなく、家畜化されたイエイヌが飼い主の管理を離れ、常時山野で野生の鳥獣を専ら捕食して自活している「状態」を指す法的な区分である。
- 分類
- 哺乳綱 食肉目(イヌ亜目)イヌ科 イヌ属
- 狩猟鳥獣としての区分
- 獣類。 鳥獣保護管理法上の狩猟鳥獣に指定されているが、生物学的な種の同定ではなく、飼い主の管理を離れ常時山野で自活しているという行動・生活状態による区分である点で他の狩猟鳥獣とは性質が異なる。 2025年11月、環境省の準備会合において識別困難性を理由に狩猟鳥獣の対象から除外する改正が検討されていることが明らかになったが、2026年7月時点で正式な施行規則改正には至っておらず、今後の動向を確認する必要がある。
生態
- 分布
- 主な供給源はペットや猟犬の遺棄とされる。 北海道東部、日光、丹沢、対馬などでシカなどの大型哺乳動物の捕食者になっている例が、沖縄県北部では絶滅危惧種を捕食する事例が報告されている。 全国的にどの程度の個体数・分布が持続的に存在するかについての体系的な統計は確認できていない。
- 生息環境
- 山地・森林が中心である。 定義そのものが「常時山野で自活する」ことを要件としており、人間の生活圏からの独立が前提となっている。
- 体サイズ
- 遺棄されたイエイヌに由来するため、犬種・個体差により体格は大きく異なり、一律の体サイズを示すデータは確認できていない。
- 活動時間
- 資料からは活動時間帯に関する体系的な記述は確認できていない。
- 食性
- 日本在来の小動物や地上に営巣する鳥類を襲って捕食するとされ、希少種の保護上も脅威となり得る。 北海道東部、日光、丹沢、対馬などでは、シカなど大型哺乳動物も捕食対象となる。
- 行動特性
- 群れを作る傾向が強く、集団で狩りを行い家畜に被害を与える例があるとされ、一度大きな群れが形成されると危険性が著しく増大するとされる。 法的定義そのものが「常時人間の生活圏から離れている」ことを要件としており、人里や人工物への接近を避ける方向の性質を持つ個体群として位置づけられる。 イエイヌという家畜が野生化した存在であり、生態的には「野生化した家畜」として扱われる。
狩猟情報
- 猟期
- 制度上は全国標準の狩猟期間(11月15日〜翌年2月15日)が適用されるが、後述の判定困難性のため実務上の運用は極めて限定的とみられる。 猟期・規制は都道府県により異なるため必ず自治体の最新情報を確認してください。
- 主な猟法
- 制度上は銃猟・わな猟が可能とされるが、実際の捕獲事例はほとんど確認されていない。
判別ポイント
最重要ポイントは、ノイヌ・ノライヌ・飼い犬の3区分とその判別の困難さである。 法的には、山野に常棲し野生鳥獣を専ら捕食して生息する個体が「ノイヌ」、市街地または村落を徘徊する無主の犬(いわゆる野良犬)は「ノライヌ」とされ狩猟鳥獣に該当しない。 飼い犬・迷い犬は当然ながら捕獲の対象外である。 しかし2023年、動物愛護議員連盟の場で環境省担当者は「国が示している定義に基づいた分析を行い断定した例はあるのか」との質問に対し「そういった例は把握していない」と回答しており、外見のみでノイヌとノライヌ・飼い犬を区別する客観的な基準は事実上存在しない。 タヌキとの誤認については、夜間の目撃情報で体格の近い中型犬と混同される場合があるとされるが、これは野犬・徘徊犬一般とタヌキとの誤認であり、体系的な調査データは確認できず不明瞭な点があることを明記する。
人との関わり
- 農林業・生活被害
- 群れによる家畜襲撃や希少種の捕食が報告されているが、全国規模での被害金額等の統計は確認できていない。
- 利用
- 一般的な利用は確認できない。 イエイヌは日本において愛玩動物としての社会的位置づけが強く、現代の食用文化には存在しない。
- 豆知識
- 「ノイヌ」は生物学的な種や亜種ではなく、「常時山野で自活しているイエイヌ」という状態を指す法的区分であり、家畜が野生化した特殊な存在という位置づけを持つ。 対馬や日光、丹沢、北海道東部などでは、ノイヌが群れでシカなどの大型哺乳類を襲う捕食者として、地域の生態系に組み込まれてしまっている例が報告されている。
出典
- 環境用語集・林野庁長官回答の引用に基づくノイヌ・ノネコの定義関連資料(取得日: 2026-07-04)
- 環境省「狩猟鳥獣の法的な定義等」参考資料1(取得日: 2026-07-04)
- Wikipedia「野犬」(取得日: 2026-07-04)
- 公益財団法人どうぶつ基金プレスリリース「【速報】犬や猫は「狩猟鳥獣」か?環境省がついに改正の検討を開始!」(取得日: 2026-07-04)
- 公益財団法人どうぶつ基金プレスリリース「環境省、狩猟鳥獣ノネコ、ノイヌ断定の実例なしと回答」(取得日: 2026-07-04)
- 環境省「狩猟鳥獣の保護を目的とした狩猟期間の制限、捕獲規制及び猟法の制限」参考資料2(取得日: 2026-07-04)
- JELF(日本環境法律家連盟)「『ノネコ』『ノイヌ』を狩猟鳥獣と指定する鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則の規定の削除を求める意見書」(取得日: 2026-07-04)
猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。
被害と対策
ノイヌ(野生化した犬)による被害は主に生態系への影響と畜産業への被害です。 野生動物(特に小型哺乳類、鳥類)への捕食被害、家畜(羊、山羊、子牛等)への襲撃、養鶏場での被害が報告されています。 また、人への威嚇行動や咬傷事故のリスクも懸念されています。
年間被害額:統計上の被害額なし(局所的被害のため)データ年度:2023年度
出典:
環境省「鳥獣保護管理基本指針」各都道府県「野犬対策実施状況」
制度上の注意
環境省は2025年に、外見からの識別が困難であることなどを理由に、狩猟鳥獣の対象からの除外を検討していると報じられている。 本記事時点で施行規則の正式な改正には至っておらず、今後の動向は要確認。
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