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ミヤマガラス
被害情報あり
鳥類 ・ 狩猟鳥獣

ミヤマガラス

知的な集団生活者

基本分類

和名
ミヤマガラス(深山烏/深山鴉)
学名
Corvus frugilegus
分類
鳥綱 スズメ目 カラス科 カラス属
狩猟鳥獣としての区分
鳥類。 環境省が指定する狩猟鳥獣46種の1種で、カラス属ではハシボソガラス・ハシブトガラスとともに3種すべてが指定されている。

生態

分布
日本には冬鳥として渡来する。 1970年代末時点では九州地方と山口県・島根県のみに分布していたが、1980年代半ばから拡大を始め、日本海側を西から東へ、1990年代には東日本を北から南へと広げ、2006年12月までに東京都を除く全道府県に分布が拡大したことが学術調査で明らかにされている。 分布拡大の要因として、有機塩素系・有機水銀系薬剤による環境汚染の改善に伴う東アジア全体での個体数回復や、農業形態の変化が挙げられている。
生息環境
平地から山地の農耕地・河原・草地などの開けた環境を主に利用する。 夜間の集団ねぐらは従来は郊外の樹林や竹林に作ることが多かったが、近年は熊本市・佐賀市などで市街地中心部(公園の巨木・街路樹・繁華街のビル屋上など)へねぐらが移動する事例が報告されている。
体サイズ
全長約44〜47cm、翼開長約90cm、体重約280〜340g。 電線に並んだ際の体格は「ハシブトガラス>ハシボソガラス>ミヤマガラス」の順で、カラス属3種の中では最も小さい。
活動時間
昼行性。 日の出前後に集団ねぐらを飛び立ち、日中は数km〜10km程度離れた農耕地で採餌し、日没前後にねぐらへ戻る規則的な日周行動サイクルを持つ。
食性
雑食性。 尖った嘴で地面を掘り起こし、ミミズや昆虫の幼虫を採食するのを得意とする。 堅果(ドングリ・クルミ)・果実・種子・穀物(落ち籾など)も食べる、動物質と植物質の双方を利用するジェネラリスト。
行動特性
群れ性が極めて強く、越冬期には大規模な集団ねぐらを形成する。 熊本市の実測調査では1つのねぐらから朝方に飛び立った個体数が10,567羽(2024年12月)・3,882羽(2025年1月)と記録されている。 小型のコクマルガラスと恒常的に混群を作り、日本の越冬群には約2%が混在すると推定されるほか、ハシボソガラスとも冬季に同じ農耕地で混群を形成する。 渡来はおおむね10月半ば、渡去は翌3月頃で、冬鳥として明確な季節性を持つ渡り鳥である。 一般には人里離れた農耕地を好み警戒心が強いとされるが、この点を定量的に検証した学術データは確認できておらず、近年はねぐらの市街地進出という変化も報告されている。

狩猟情報

猟期
全国標準は11月15日〜2月15日、北海道は10月1日〜1月31日とされる。 ミヤマガラスに固有の性別制限や1日あたりの捕獲羽数上限は確認できなかった。 猟期・規制は都道府県により異なるため必ず自治体の最新情報を確認してください。
主な猟法
銃猟(散弾銃が中心)および網猟。 鳥獣保護管理法施行規則により、わなを用いた鳥類の捕獲は禁止猟法とされているため、通常の狩猟でわな猟の対象とはならない。 市街地・農地での有害鳥獣捕獲(箱わな等)は、通常の狩猟とは別枠の許可捕獲である。

判別ポイント

成鳥の最大の特徴は嘴の付け根が白いこと。 上下の嘴の付け根の皮膚が裸出して白く見え、遠目にも「顔の前が白っぽい」と分かる。 ただし幼鳥は嘴の付け根に黒い毛状の羽が残り成鳥の白色部が見えないため、留鳥のハシボソガラスと混同しやすい(この毛は生後10〜15か月ほどで抜ける)。 嘴の湾曲はハシボソガラスよりなだらかで直線的に先端が尖り、額との間に段差があるように見える点も手がかりになる。 行動面では、ミヤマガラスは大群で田を移りながら次々に地面をつつくのに対し、混群のハシボソガラスは群れの端に取り残されがちでつつく頻度も少ない。 鳴き声は「ガァー」「グワァー」とハシボソ・ハシブトより小さくしわがれた声である。 冬鳥(概ね10月半ば〜翌3月)であるため、それ以外の時期に見られる大型カラスは留鳥のハシボソガラス・ハシブトガラスである可能性が高いが、越冬期は在来2種と同じ農耕地・ねぐらを共有するため時期だけでは断定できない。 群れに混じる非狩猟鳥獣のコクマルガラス(全長約33cm、後頭部が灰色がかる)との混同・混獲にも注意する。

人との関わり

農林業・生活被害
農林水産省統計では、ハシボソガラス・ハシブトガラス・ミヤマガラスを合算した「カラス」区分による全国の農作物被害額が令和5年度で13億4,100万円(鳥類による被害額全体の49.8%)と鳥類最大の加害区分になっているが、これは3種合算の数値であり、ミヤマガラス単独の被害額は公表データから特定できない。 生活被害としては、冬季の集団ねぐらが郊外の山林から市街地中心部へ移動する事例が熊本市・佐賀市で報告され、糞害や鳴き声が問題化している。
利用
ミヤマガラスを含むカラス類の食用利用は一般的でない。 近年ごく一部で「カラス肉」提供の取り組みが話題になったことはあるが限定的で、厚生労働省は野鳥の生食を病原体保有の観点から危険として注意喚起している。
豆知識
学名frugilegusは「果実・穀物を集める者」を意味するラテン語に由来し、農耕地での採食習性を反映した命名とされる。 また本種(英名Rook)は認知科学の主要な実験対象でもあり、二重トラップ管課題やイソップ寓話パラダイム(石で水位を上げ浮いた餌を得る)を解決した学術報告がある。

出典

  1. 環境省「狩猟制度の概要」(取得日: 2026-07-04
  2. 高木憲太郎(2010)「日本におけるミヤマガラスの越冬分布の拡大」Bird Research Vol.6(取得日: 2026-07-04
  3. NPO法人バードリサーチ「ミヤマガラス個体数調査&識別マニュアル」(取得日: 2026-07-04
  4. 日本野鳥の会熊本県支部「市街地におけるミヤマガラスの飛来数調査 調査報告書」(令和7年3月)(取得日: 2026-07-04
  5. 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害の推移(鳥獣種類別)」(令和5年度)(取得日: 2026-07-04
  6. 日本野鳥の会「BIRD FAN ミヤマガラス」(取得日: 2026-07-04
  7. Seed, A.M. et al. (2006) "Investigating physical cognition in rooks." Current Biology(取得日: 2026-07-04

猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。

被害と対策

カラス類(ミヤマガラス、ハシブトガラス、ハシボソガラス)による農業被害は、鳥類被害の中で最も深刻で、鳥類被害総額約27億円のうち約13億円(鳥類被害の約50%)を占めています。 農業面では、果樹類(ブドウ、スイカ、メロン、トマト等)への食害が特に深刻で、果実をつついて食べるだけでなく、商品価値を損なうため経済的損失が大きくなります。また、トウモロコシなどの穀物への食害、水稲の種籾掘り起こし、野菜の新芽への被害も全国的に発生しています。 カラス類の被害対策が困難な理由は、その高い知能と学習能力にあります。防鳥ネットや音響装置などの対策にすぐに慣れてしまい、効果が長続きしないことが問題です。また、早朝から活動を開始するため、農作物が熟す時期には収穫前に食害を受けることが多く、農家の労力が無駄になってしまいます。 都市部では生活被害も深刻で、ゴミ集積所を荒らして散乱させる、電線や建物での騒音・糞害、農作業や通行人への威嚇行為なども問題となっています。特に繁殖期には攻撃性が高まり、人身への危害も報告されています。全国的に分布し、農村部から都市部まで幅広い地域で被害が発生しているため、総合的な対策が求められています。

年間被害額:約13億円(鳥類被害の約50%、鳥類で最大)データ年度:2023年度(令和5年度)
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