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クロガモ
被害情報あり
鳥類 ・ 狩猟鳥獣

クロガモ

黒い羽根の海の勇者

基本分類

和名
クロガモ(黒鴨)
学名
Melanitta americana(旧分類ではMelanitta nigraの亜種M. n. americanaとされていたが、近年はアメリカ大陸・東アジアに分布する個体群を独立種として扱う説もあり、資料により学名の扱いが分かれる)
分類
鳥綱 カモ目(Anseriformes)カモ科(Anatidae)クロガモ属。同じ狩猟対象の潜水ガモ3種(ホシハジロ・キンクロハジロ・スズガモ)がハジロ属であるのに対し、クロガモのみクロガモ属に属し、北半球の海洋に適応した「真の海ガモ(scoter)」のグループに位置づけられる。
狩猟鳥獣としての区分
鳥類。 環境省が指定する狩猟鳥獣46種の1種。

生態

分布
冬鳥として九州以北の沿岸域に飛来し越冬する。 北日本(特に太平洋側)で多く見られ、沿岸海上に群れをなす。 繁殖はシベリア東部やアラスカのツンドラ地帯で行われ、日本国内での繁殖記録は基本的にないが、北海道で幼鳥が観察されたことから繁殖の可能性を指摘する報告もある。
生息環境
非繁殖期(越冬期)はほぼ完全に海洋性で、沿岸の岩礁海岸や外洋の波の荒い海域に生息する。 河川・湖沼などの内陸水系にはほとんど出現しない。 繁殖期は高地ツンドラの沼地・草原を利用する。
体サイズ
全長44〜54cm(オス約51cm、メス約43cm)、翼開張79〜90cm、体重0.6〜1.4kg。
活動時間
日中に沿岸海上で採食・休息する様子が広く観察されており、他の潜水ガモと同様に日中活動型と考えられるが、夜間活動の有無については裏付ける資料が確認できていない。
食性
動物食性が強く、二枚貝類・巻貝類を中心に、等脚類・端脚類・小型のカニなどの甲殻類、ウニ・ナマコ類も食べる。 貝を丸ごとくわえて水面に浮上し、そのまま呑み込む採食行動をとる。 繁殖期は昆虫や魚卵など淡水性の餌も利用するとされる。
行動特性
潜水時には翼を少し開いて尾羽を立てるように垂直に潜る独特の潜水姿勢をとり、50m超の深さまで潜水できるとされる。 これは同じ潜水ガモであるホシハジロ・キンクロハジロ(20m程度とされる)を大きく上回る。 冬期は群れで行動することが多く、沿岸海上でしばしば100羽を超える大群となるが、繁殖に伴う恒常的な社会構造(コロニー等)を形成する種ではない。 内陸の湖沼・河川や都市近郊の池にはほとんど現れず、外洋・岩礁海岸という単一のニッチに強く特化した生活史を持つ。 オスは繁殖期に「ピーフィッ」という口笛に似た澄んだ声で鳴く。

狩猟情報

猟期
全国標準は毎年11月15日〜2月15日(猟区の区域内では10月15日〜3月15日)。 かつて青森県・秋田県・山形県の猟区外では別期間が設けられていたが、令和4年度の鳥獣保護管理法施行規則改正(施行: 令和4年9月15日)によりカモ類全般が全国標準の期間に統一されている。 猟期・規制は都道府県により異なるため、必ず自治体の最新情報を確認すること。
主な猟法
銃猟(散弾銃によるカモ猟)、網猟(ムソウ網など)。 スズガモとクロガモは、猟区の区域外において1日当たり合計5羽まで、網猟の場合は狩猟期間を通じて合計200羽までという捕獲羽数制限が設けられている。 わな猟による捕獲は一般的でない。

判別ポイント

ホシハジロ・キンクロハジロ・スズガモとの違い: これら3種はいずれもハジロ属で、内陸の湖沼・河川から沿岸の汽水域まで幅広く利用するのに対し、クロガモは外洋・岩礁海岸を主な生息地とする真の海ガモである。 オスは全身が艶のない黒一色で、他3種のようなコントラストの強い体色パターン(ホシハジロ: 赤褐色の頭部と灰色の体、キンクロハジロ: 黒と白のツートン、スズガモ: 頭部の光沢と白い脇腹)を持たないため、オス同士の誤認の可能性は低い。 最大の識別点はくちばしで、クロガモのオスはくちばし基部に黄橙色のコブ状の膨らみがあり、これは他3種には見られない特徴である。 メスは黒褐色で頬が白っぽい地味な羽色であり、遠方や逆光の海上では他3種の雌とシルエットが紛らわしくなる場合があるため、生息環境(外洋か内陸・沿岸浅所か)と群れの規模を合わせて判断することが実務上重要である。 ビロードキンクロ(同属で日本では飛来数の少ない冬鳥)との違い: ビロードキンクロはオス・メスとも次列風切(翼の一部)に白斑があり、これがクロガモとの最も確実な識別点となる。 オスは眼下部に三日月状の白斑と白〜灰白色の虹彩を持ち、上嘴基部の瘤は黒い点でもクロガモ(コブが黄橙色)と異なる。 メス・幼鳥も眼前部と頬に白い不明瞭な斑紋を持つ点でクロガモのメスと区別できる。 シノリガモとの違い: シノリガモも荒波の立つ岩礁海岸を好み、クロガモと同じ環境で観察されることがあるが、体色・模様の詳細な識別点は確認できていない。

人との関わり

農林業・生活被害
外洋性・海洋性の海ガモであり、農地に依存する生活史を持たないため、農業被害に関する統計・報告は確認できていない。
利用
ジビエとしての取り扱いはあるが、貝類を主食とすることに由来する独特の生臭さがあるとされ、食味の評価は他の淡水系カモ類ほど確立していない。 臭みを抑えるため香草を多用したり、酒に浸けるなどの調理上の工夫が必要とされ、鍋・ロースト・シャルキュトリ(塩漬け・加工品)などの調理法が挙げられている。 取引価格の目安は1羽あたり2000〜2500円程度とする情報がある。
豆知識
潜水中に翼を少し開いて尾羽を立てるように空中へ出し、垂直に潜っていく独特の潜水フォームをとる。 オスは繁殖期に「ピーフィッ」という口笛に似た澄んだ声で鳴き、他の多くのカモ類のオスとは異なる特徴的な求愛の鳴き声を持つ。

出典

  1. 日本野鳥の会「クロガモ」(取得日: 2026-07-04
  2. Wikipedia「クロガモ」(取得日: 2026-07-04
  3. 京都・洛西の野鳥 Diastataxy「【グラフで見る】鳥類の潜水時間 潜水カモ ホシハジロ キンクロハジロ スズガモ クロガモ」(取得日: 2026-07-04
  4. 東京都環境局「狩猟鳥獣の種類等について」(取得日: 2026-07-04
  5. Wikipedia「ビロードキンクロ」(取得日: 2026-07-04
  6. ジビエマルシェ「クロガモ」(取得日: 2026-07-04

猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。

被害と対策

カモ類(マガモ、ヒドリガモ、カルガモ、ハシビロガモ、ヨシガモ、クロガモ等)による農業被害は主に水田での稲作への影響です。 群れで水田に飛来し、播種直後の種籾を掘り起こして食べたり、成長期の稲穂や青い稲の葉を食害したりします。 クロガモは主に海岸部に生息するため農業被害は限定的ですが、冬季に内陸部の水田に飛来することがあり、その際に稲作への軽微な被害が報告されています。 また、麦類への食害、牧草地での牧草食害も稀に発生します。

年間被害額:約4.5億円(カモ類全体、鳥類被害の14%)データ年度:2023年度
出典:
農林水産省「野生鳥獣による農作物被害状況」環境省「鳥獣保護管理基本指針」
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