基本分類
- 和名
- キンクロハジロ(金黒羽白)
- 学名
- Aythya fuligula
- 分類
- 鳥綱 カモ目(Anseriformes)カモ科(Anatidae)ハジロ属
- 狩猟鳥獣としての区分
- 鳥類。 環境省が指定する狩猟鳥獣46種の1種。 2026年3月17日公表の環境省第5次レッドリスト(鳥類及び爬虫類・両生類)において、本種は新たに絶滅危惧II類(VU)に判定・掲載された。 狩猟鳥獣指定そのものが本稿時点で変更されたかどうかは確認できておらず、狩猟にあたっては必ず環境省・自治体の最新情報を確認する必要がある。
生態
- 分布
- シベリア・ヨーロッパ北部などユーラシア大陸北部で繁殖し、冬季はアフリカ北部・ヨーロッパ・中近東・インド・中国東部などへ南下して越冬する。 日本には冬鳥として九州以北の広い範囲に飛来し、北海道東部では少数が繁殖する個体群も確認されている。
- 生息環境
- 湖沼・河川・河口・内湾・堀のほか、都市公園の池にも普通に生息する。 海ガモに分類されるが、淡水域への依存度が近縁の潜水ガモ(ホシハジロ・スズガモ・クロガモ)と比べても高く、湖沼から汽水・内湾まで幅広い水域を利用する。 皇居東御苑の濠でも秋季から冬季にかけて多く渡来し、休息・潜水採食が観察されている。
- 体サイズ
- 全長約40〜47cm、体重約0.3〜1kg、翼開張約67〜73cm。
- 活動時間
- 基本パターンは日中に休息し、夕暮れ以降に潜水採食を行う薄暮〜夜間寄りの行動とされる。 ただし都市公園の池など人からの給餌がある環境では、昼間から潜水採食や人・ボートへの接近行動が観察されており、生息環境によって活動パターンに幅がある。
- 食性
- 雑食性。 水生植物、水生昆虫、貝類、甲殻類、軟体動物、魚類やその卵、カエルなどを食べる。 水底のシジミなど二枚貝を好んで捕食するとされ、潜水時間はおおむね15秒前後、潜水深度は通常2m程度だが最大10mに達したとの観察報告もある。
- 行動特性
- 群れを形成して行動し、スズガモなど他のカモ類と混群を作ることも多い。 都市部の公園の池では人が与える餌を目当てに岸辺の人やボートを追いかける個体がいるなど、人への警戒心が薄く大胆な行動が複数の観察記録で報告されている。 生息環境の幅が広く、内陸湖沼から河口・内湾・都市公園池まで利用できるジェネラリスト的な性質を持つ。
狩猟情報
- 猟期
- 全国標準は毎年11月15日〜2月15日(狩猟鳥獣46種共通)。 猟期・規制は都道府県により異なるため、必ず自治体の最新情報を確認すること。 2026年3月に環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VU)に新規掲載されたばかりであり、都道府県によっては独自に捕獲を制限している場合があるため、対象都道府県への確認がとくに重要である。
- 主な猟法
- 銃猟(散弾銃によるカモ猟)が中心。 網猟・わな猟による捕獲は一般的でない。
判別ポイント
スズガモ(同じハジロ属で最も混同されやすい海ガモ)との違い: オスは頭の後ろに目立つ長い冠羽があればキンクロハジロとほぼ確定できる。 スズガモには長い冠羽がなく、背中は白黒の波状模様(キンクロハジロは背中が黒一色)、頭部の光沢はキンクロハジロが紫がかりスズガモは緑がかる。 メス同士は特に酷似する代表的な混同ペアで、キンクロハジロのメスは短いながらも冠羽が存在し嘴基部の白斑は目立たないのが基本だが、まれに白斑が出る個体もある。 スズガモのメスは冠羽がなく、嘴の付け根に明瞭な白い部分がある点が識別の決め手とされる。 体色は背中・脇がキンクロハジロは茶色っぽく、スズガモは灰色っぽい傾向があり、生息環境も補助的な手がかりになる(スズガモは河口・海岸沿いなど海域中心、キンクロハジロは湖沼・公園の池を含む淡水域が中心。 ただし汽水域では混群も見られるため確定要因にはならない)。 ホシハジロとの違い: オスは光沢のある栗色(赤褐色)の頭部と灰色の体を持ち、キンクロハジロの黒い頭部・黒い体とは色調が明確に異なるため容易に区別できる。 メスは両種とも地味な褐色で紛らわしいが、ホシハジロには冠羽がなく頭部が丸みを帯びた印象であるのに対し、キンクロハジロのメスは短い冠羽が確認できる点が識別点となる。 クロガモとの違い: オスは全身が艶のある黒色で、キンクロハジロのオスに見られる白い脇腹・腹部がない点で区別できる。 メスは頭部が黒褐色で頬に淡色斑を持つが体色がキンクロハジロのメスより黒っぽく冠羽も持たない。 生息環境も決定的な手がかりで、クロガモは外洋・沿岸の岩礁域中心で内陸の湖沼にはほとんど入らないため、内陸の淡水域で観察された場合はクロガモである可能性は低い。
人との関わり
- 農林業・生活被害
- 水生植物・水生昆虫・貝類など水域の生物を主な食物とするため、農作物への被害報告は確認できず、統計上も見当たらない。 理論上は二枚貝(アサリ等)を捕食するため漁場への影響が懸念されうるが、本種単独の漁業被害データは確認できていない。
- 利用
- ジビエとしての評価は個体差が大きく賛否が分かれる。 海ガモ特有の磯・海苔のような匂いが強く出て「ドブ臭い」と酷評される個体がある一方、当たりとされる個体はカルガモのようなしっかりした肉質とカモらしい旨味を持ち、塩胡椒などのシンプルな味付けやレモン等の柑橘との組み合わせでクセを抑えて食べられるとされる。 魚介食の性質上、食べてきた餌によって味に個体差が出やすい種とされる。
- 豆知識
- 皇居東御苑の濠では秋季から冬季にかけて比較的多く渡来し、休息や潜水採食のほか、コブハクチョウ用の給餌場所に集まる様子も観察されている。 都市部の公園の池では人が与える餌を目当てに岸辺の人やボートを追いかける個体がいるなど、水鳥の中でも人に慣れやすい種として知られる。
出典
- 環境省「第5次レッドリスト(鳥類及び爬虫類・両生類)の公表について(お知らせ)」(取得日: 2026-07-04)
- バードリサーチ「キンクロハジロが絶滅危惧種になりました」(取得日: 2026-07-04)
- 環境省 自然環境局 生物多様性センター「鳥類アトラスWEB版(鳥類標識調査 回収記録データ)キンクロハジロ」(取得日: 2026-07-04)
- 宮内庁「キンクロハジロ」(皇居東御苑いきもの一覧)(取得日: 2026-07-04)
- orbis-pictus「キンクロハジロの特徴、分布、生態」(取得日: 2026-07-04)
- 新狩猟世界(株式会社チカト商会)「『ドブ臭い』と酷評される『キンクロハジロ』も、個体によってはシンプルに美味い」(取得日: 2026-07-04)
- Wikipedia「キンクロハジロ」(取得日: 2026-07-04)
猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。
カモ類(マガモ、ヒドリガモ、カルガモ、ハシビロガモ、ヨシガモ、キンクロハジロ等)による農業被害は主に水田での稲作への影響です。 群れで水田に飛来し、播種直後の種籾を掘り起こして食べたり、成長期の稲穂や青い稲の葉を食害したりします。 キンクロハジロは主に湖沼や池で生活するため農業被害は限定的ですが、渡り時期に水田に飛来することがあり、その際に稲作への軽微な被害が報告されています。 また、ゴルフ場の池での魚類への影響、養魚場での軽微な被害も稀に発生します。
2026年3月公表の環境省第5次レッドリストで、絶滅危惧II類(VU)に新たに指定された。 狩猟鳥獣としての指定は継続しているが、生息数の減少傾向が指摘されており、生息状況に留意が必要とされる。

