基本分類
- 和名
- ヒグマ(日本産亜種はエゾヒグマ)
- 学名
- Ursus arctos(日本産亜種:Ursus arctos yesoensis)
- 分類
- 哺乳綱 食肉目 クマ科 クマ属
- 狩猟鳥獣としての区分
- 獣類。 鳥獣保護管理法上の狩猟鳥獣。 人身被害・生活圏出没の増加を受け、令和6(2024)年4月にツキノワグマとともに「指定管理鳥獣」に追加指定された。 市街地等への出没時に市町村等が銃猟を行える緊急銃猟制度の対象となる「危険鳥獣」にも位置づけられている。
生態
- 分布
- 日本国内では津軽海峡以北の北海道本島のほか、国後島・択捉島に分布し、本州以南には生息しない。 北海道内は渡島半島、積丹・恵庭、天塩・増毛、道東・宗谷、日高・夕張の5つの地域個体群に区分され、このうち積丹・恵庭(石狩西部)と天塩・増毛の2地域個体群は環境省レッドリストで「絶滅のおそれのある地域個体群(LP)」に指定されている。 平成15年度から平成30年度の間に北海道内の分布メッシュは約1.29倍に拡大した。
- 生息環境
- 森林を中心に、サケ・マスが遡上する河川、海岸部から高山帯まで幅広い環境を利用する。
- 体サイズ
- オスは体長約2.0m・体重約150〜400kg、メスは体長約1.5m・体重約100〜200kg程度とされる。 国内に生息する陸生哺乳類としては最大級で、ホッキョクグマと並び現生クマ科でも最大級に位置づけられる。 ツキノワグマ(日本産オス平均60〜70kg程度)と比較して明確に大型である点が最大の識別点の一つ。
- 活動時間
- 日中も含めて活動するが、人を避けて薮などに隠れて行動する傾向が指摘されている。 積雪期には冬眠し、この間は基本的に絶食状態に入るが、個体や地域によっては冬眠しない例も報告されている。
- 食性
- 雑食性だが、同じ日本産のクマ科であるツキノワグマに比べて肉食傾向が強いとされ、シカ、イノシシ、魚類(サケ・マス)、果実、堅果類(クルミ・ドングリ)、アリ、ザリガニなど季節に応じて幅広い食物を利用する。 知床半島などではサケ・マスの遡上期に河川へ複数個体が一時的に集中する、単独性の食肉目としては珍しい高密度採食行動が知られている。
- 行動特性
- なわばりを持たず、個体間の行動圏は重複する。 基本的に単独で行動し、複数個体で行動するのは母子(子は1〜2歳まで母親と同行)、親離れ直後の兄弟、繁殖期のペア形成、サケの遡上期など餌が豊富な時期に限られる。 繁殖期(5〜7月)にはオスが交尾相手を探して行動圏を拡大し、メスを発情させる目的でオスが子グマを殺す「子殺し」が起こり得ることが報告されており、恒常的な社会構造を持たない社会性の低い種であることを示す。 オスの行動圏は数百km²に及び、メスはオスより狭い数十km²の範囲で生活・繁殖する。 基本的には人を避ける警戒的な性質を持つが学習能力が高く、特定の食物の味を一度覚えると同じ場所に繰り返し出没する傾向がある。
狩猟情報
- 猟期
- 全国標準の狩猟期間は11月15日から翌年2月15日までだが、北海道では独自の条例により期間が異なる場合がある。 地域個体群の個体数水準(絶滅のおそれのある地域個体群を含む)によっては、都道府県が捕獲数の上限設定や捕獲自体の制限を行っている場合がある。 猟期・捕獲規制は都道府県により異なるため、必ず自治体の最新情報を確認すること。
- 主な猟法
- 銃猟が中心。 法律上、ヒグマ・ツキノワグマの捕獲のためにわなを使用する方法は狩猟における禁止猟法とされており、一般の狩猟でクマ類にわな猟を用いることはできない。 指定管理鳥獣捕獲等事業や有害鳥獣捕獲など都道府県知事等の許可に基づく捕獲では箱わな等の使用が個別に認められる場合があるが、詳細は自治体ごとの制度により異なる。 銃猟については、3発以上の実包を装填できる弾倉を持つ散弾銃や、口径5.9mm以下の小口径ライフル銃の使用が禁止されている。
判別ポイント
ツキノワグマとの違い: 分布はヒグマが北海道のみ、ツキノワグマが本州・四国のみで重複しないため、生息地の情報が最も確実な一次的判別基準になる。 体格はヒグマが大型(オス体長約2.0m・体重約150〜400kg)、ツキノワグマは中型(頭胴長110〜180cm、日本産オス平均60〜70kg程度)。 肩の筋肉が盛り上がる「肩コブ」はヒグマで顕著だがツキノワグマでは目立たない。 胸部の模様はヒグマに明瞭な白斑がなく、ツキノワグマには三日月型の白斑があるが、欠如・不明瞭な個体もあるためこの一点のみでの判断は避けるべきとされる。 食性はヒグマの方が肉食傾向が強い。 いずれの種も人身被害につながる危険性が高いため、目撃時は種の同定よりもまず安全確保を優先することが基本とされる。
人との関わり
- 農林業・生活被害
- 北海道内の農業被害額は平成25年度の9,300万円から令和元年度には2億2,300万円へと約2.4倍に増加し、平成30年度には過去最大の捕獲数(918頭)及び農業被害額(2億2,800万円)を記録した。 クマ類(ヒグマ・ツキノワグマ合算の全国値)による人身被害は令和5年度に197件(218人、うち死亡6人)と、月別統計のある平成18年度以降で最多ペースを記録している。 ただしヒグマ単独の全国被害統計は確認できていない。
- 利用
- 熊肉はアイヌ文化や東北のマタギ文化において古くから利用されてきた。 秋田県阿仁地方のマタギには、捕獲した熊を集落全体で分かち合う「ケボカイ」という伝統的な儀礼が今も伝えられている。 熊の胆嚢(熊胆)は冬眠により胆汁が濃縮されるため良質とされ、伝統的に高価な漢方薬として珍重されてきた。 もっとも、シカ・イノシシと異なり農林水産省統計上クマ類は「その他鳥獣」に区分されることが多く、全国的なジビエ利用量の内訳は確認できていない。
- 豆知識
- 北海道東部では、わなを警戒して回避しながら家畜を執拗に襲撃した個体(通称「OSO18」)が2019年から2023年まで牛66頭を襲ったとされ、駆除まで長期間を要した事例が広く報道された。
出典
- 環境省「クマ類の生息状況、被害状況等について」(取得日: 2026-07-04)
- 北海道庁「北海道ヒグマ管理計画(第2期)(素案)」(取得日: 2026-07-04)
- 北海道庁「令和5(2023)年末におけるヒグマ個体数推定結果について」(取得日: 2026-07-04)
- 札幌市「ヒグマの生態・習性」(取得日: 2026-07-04)
- ウィキペディア「ヒグマ」(取得日: 2026-07-04)
- 環境省「クマに関する各種情報・取組」(取得日: 2026-07-04)
- 群馬県「群馬県における狩猟のルール」(取得日: 2026-07-04)
猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。
被害と対策
ヒグマによる被害は北海道で深刻な社会問題となっており、農業被害と人身被害の両方が発生しています。 農業面では、トウモロコシ畑への大規模な食害、果樹園(リンゴ、サクランボ等)での果実食害と樹木の破損、牧草地での牧草食害、養蜂場での蜂蜜・巣箱の破壊などが主な被害です。特にトウモロコシは嗜好性が高く、一頭で広範囲の畑を荒らすため被害が甚大になりやすいです。 また、人身被害のリスクが極めて高く、農作業中や山菜採り中の遭遇事故、市街地への出没による生活への脅威も深刻な問題となっています。近年は生息域の拡大と個体数の増加により、被害地域・被害規模ともに拡大傾向にあります。
年間被害額:約3.5億円(農業被害のみ、人身被害対策費・経済損失は別途)データ年度:2023年度
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