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ハシボソガラス
被害情報あり
鳥類 ・ 狩猟鳥獣

ハシボソガラス

農村の堅実な賢者

基本分類

和名
ハシボソガラス(嘴細烏)
学名
Corvus corone
分類
鳥綱 スズメ目 カラス科 カラス属(日本を含むアジア中部・東部に分布するのは亜種C. c. orientalisとされる)
狩猟鳥獣としての区分
鳥類。 環境省が指定する狩猟鳥獣46種の1種で、カラス属ではハシブトガラス・ミヤマガラスとともに3種すべてが指定されている。

生態

分布
日本では北海道から九州にかけて広く分布する留鳥で、九州以北で繁殖する。 世界的には熱帯・寒帯を除くユーラシア大陸温帯域のほぼ全域に分布する。 鳥類標識調査では新放鳥1,368羽に対し移動回収26例・最長移動距離727kmの記録があり、基本は定住的だが一部に長距離移動個体も存在する。
生息環境
平地から山地の農耕地・河川敷・草地・海岸などの開けた環境を好む。 市街地中心部・高山帯・鬱閉した森林では、都市と森林の双方に強いハシブトガラスに比べて少ない。 近年はハシブトガラスの都市進出に押され、都市化が進む地域では個体数がむしろ漸減傾向にある。
体サイズ
全長約50cm、翼開長約99cm、体重約400〜600g。 嘴は長さ約5.3cm・幅約1.9cm(東京都環境局の実測値)。 ハシブトガラス(全長約57cm、嘴長約6.8cm・幅約2.7cm)より一回り小さく、嘴も細い。
活動時間
昼行性。 非繁殖期は夕暮れ時に集団ねぐらへ移動する。 地面を交互歩行(ウォーキング)しながら採食する時間が長い。
食性
雑食性で、昆虫類・小動物・鳥類の卵や雛・動物の死骸・果実・種子などを食べる。 1957年の全国胃内容物調査では農作物が食物の77%を占め、樹木の種子を多く食べるハシブトガラスより植物質(特に農地由来の食物)への依存が強いとされた。 食物を草叢や石の下に隠して後で利用する貯食行動も知られる。
行動特性
繁殖したペアは年間を通じて巣を中心とする縄張り(半径20〜100m程度)を持ち、産卵数3〜5個、抱卵約20日、育雛約1か月で繁殖する。 非繁殖個体・幼鳥は縄張りを持たず集団で行動し、夜は集団ねぐらをとる(数十羽から最大1万羽近く、多くは数百〜数千羽規模)。 繁殖期は縄張りへの接近に対し威嚇・攻撃で反応するなど警戒心が強く、都市中心部への進出はハシブトガラスに比べて弱い。 冬季には農耕地でミヤマガラスと混群を作ることがある。

狩猟情報

猟期
全国標準は11月15日〜2月15日、北海道は10月1日〜1月31日とされる。 ハシボソガラスに固有の性別制限や1日あたりの捕獲羽数上限は確認できなかった。 猟期・規制は都道府県により異なるため必ず自治体の最新情報を確認してください。
主な猟法
銃猟が主体。 網猟も区分としては存在する。 わなを用いた鳥類の捕獲は禁止猟法であり、通常の狩猟では対象とならない。 農地での有害鳥獣捕獲(箱わな等)は、通常の狩猟とは別枠の許可捕獲である。

判別ポイント

ハシブトガラスとの判別が最重要。 嘴はハシボソガラスの方が細く、上縁のカーブがなだらか(長さ約5.3cm・幅約1.9cm)で、ハシブトガラスは太く先端に向けて大きく湾曲する(長さ約6.8cm・幅約2.7cm)。 額の形状も有力な手がかりで、ハシボソガラスは嘴から額にかけて段差がなくなだらかなのに対し、ハシブトガラスは額が段差状に丸く出っ張り、シルエットでも判別できる最も確実なポイントとされる。 鳴き声はハシボソガラスが濁った声で「ガアガア」、ハシブトガラスは澄んだ声で「カアカア」で、澄んだ声で鳴いていればハシブトガラスとみてまず間違いないとされる。 鳴くときの姿勢も異なり、ハシボソガラスは杭や電柱の先端で頭を前後に振りお辞儀をするように全身で鳴くのに対し、ハシブトガラスは頭を上下させ体を水平に保つ。 歩き方も、ハシボソガラスは足を交互に出すウォーキングで地面採食が多いのに対し、ハシブトガラスは両足をそろえて跳ねるホッピングが中心。 生息環境はハシボソガラスが農地・河川敷など開けた郊外、ハシブトガラスは市街地・森林に多いが、同所的に見られることも多く環境だけでの断定は避ける。 冬鳥のミヤマガラスとは、成鳥の嘴基部が白っぽく裸出し嘴がまっすぐ尖る点で区別できる。 非狩猟鳥獣のコクマルガラス・カササギとの誤認捕獲にも注意する。

人との関わり

農林業・生活被害
農林水産省統計は、ハシボソガラス・ハシブトガラス・ミヤマガラスを合算した「カラス」区分の数値のみを公表しており、種別の内訳は特定できない。 「カラス」区分による全国の農作物被害額は令和6年度で約13億6,400万円(被害面積1.0千ha)と、鳥類被害額全体の約44%を占め鳥類最大の加害区分である。 地域の実例としては、水稲の田植え後の苗踏み、トマト・スイカ・トウモロコシ等の野菜、リンゴ・ナシ等の果樹、生ごみの散乱などが典型例として紹介されている。
利用
現在ではカラス類を食用に供することはまずなく、利用は一般的でない。 歴史的には北海道・秋田県・茨城県・長野県・岐阜県などで食用とされた経緯があり、長野県上田市には「カラス田楽」という郷土料理が伝わるが、現在の食文化として定着してはいない。 厚生労働省は野鳥肉の生食を食中毒・寄生虫感染のリスクから危険として注意喚起している。
豆知識
走行中の自動車にオニグルミを轢かせて殻を割る「クルミ割り行動」は、1990年前後に宮城県仙台市で観察されて以降、複数の学術研究が積み重ねられてきた道具的採食・学習の代表事例。 北海道函館市では電線などの高所から道路上へ落とす投下法が中心と報告されており、仙台市の「車の前に置く」手法との地域差も確認されている。

出典

  1. 環境省「狩猟制度の概要」(取得日: 2026-07-04
  2. 環境省 生物多様性センター「鳥類標識調査 ハシボソガラス」(取得日: 2026-07-04
  3. 東京都環境局「ハシブトガラスとハシボソガラスの違い」(取得日: 2026-07-04
  4. 環境省「自治体担当者のためのカラス対策マニュアル」(2001年)(取得日: 2026-07-04
  5. 公益財団法人日本野鳥の会「BIRD FAN ハシボソガラス」(取得日: 2026-07-04
  6. 仁平義明(1995)「ハシボソガラスの自動車を利用したクルミ割り行動のバリエーション」日本鳥学会誌44巻1号(取得日: 2026-07-04
  7. 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(令和6年度)」別添1(取得日: 2026-07-04

猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。

被害と対策

カラス類(ミヤマガラス、ハシブトガラス、ハシボソガラス)による農業被害は、鳥類被害の中で最も深刻で、鳥類被害総額約27億円のうち約13億円(鳥類被害の約50%)を占めています。 農業面では、果樹類(ブドウ、スイカ、メロン、トマト等)への食害が特に深刻で、果実をつついて食べるだけでなく、商品価値を損なうため経済的損失が大きくなります。また、トウモロコシなどの穀物への食害、水稲の種籾掘り起こし、野菜の新芽への被害も全国的に発生しています。 カラス類の被害対策が困難な理由は、その高い知能と学習能力にあります。防鳥ネットや音響装置などの対策にすぐに慣れてしまい、効果が長続きしないことが問題です。また、早朝から活動を開始するため、農作物が熟す時期には収穫前に食害を受けることが多く、農家の労力が無駄になってしまいます。 都市部では生活被害も深刻で、ゴミ集積所を荒らして散乱させる、電線や建物での騒音・糞害、農作業や通行人への威嚇行為なども問題となっています。特に繁殖期には攻撃性が高まり、人身への危害も報告されています。全国的に分布し、農村部から都市部まで幅広い地域で被害が発生しているため、総合的な対策が求められています。

年間被害額:約13億円(鳥類被害の約50%、鳥類で最大)データ年度:2023年度(令和5年度)
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