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ハシビロガモ
被害情報あり
鳥類 ・ 狩猟鳥獣

ハシビロガモ

独自の手法を持つ水辺の専門家

基本分類

和名
ハシビロガモ(嘴広鴨)
学名
Spatula clypeata(旧学名 Anas clypeata)
分類
鳥綱 カモ目(Anseriformes)カモ科(Anatidae)ハシビロガモ属
狩猟鳥獣としての区分
鳥類。 環境省が指定する狩猟鳥獣46種(鳥類26種)の1種。

生態

分布
日本には主に冬鳥として全国各地に飛来し越冬する。 北海道北部ではごく少数が繁殖する個体群も確認されている。 世界的にはユーラシア大陸・北米大陸の中緯度から高緯度地域で繁殖し、冬季はアフリカ大陸北部・ヨーロッパ南部・インド・中国南部・北米南部などへ南下して越冬する、長距離の渡りを行う種である。
生息環境
河川・湖沼・池・湿地などの内陸水系に生息する。 越冬期は人造湖(ダム湖・ため池など)での確認率が高く、プランクトンが多く発生する富栄養化した水辺に集まる傾向がある。 都市公園の池でも観察される。
体サイズ
全長43〜56cm(おおむね50cm前後、オス約51cm・メス約43cmとする資料もある)。 翼開張70〜85cm、体重0.4〜1.1kg。 カルガモよりやや小さく、コガモよりは大きい中型のカモ。 幅広くヘラ状の嘴が和名の由来である。
活動時間
ハシビロガモに固有の昼夜の活動リズムを明示した資料は確認できていない。 日中に水面でヘラ状の嘴を使った濾過採食を行う姿も観察されている。
食性
植物食傾向の強い雑食で、種子・プランクトン・昆虫・軟体動物・魚類などを食べる。 カモ科の中では動物食の傾向が強い部類で、動物プランクトンが食物に占める比率が30%以上に達することもあるとされる。 幅広い嘴の内縁に並ぶ発達した板歯(櫛状突起)で水ごと食物を吸い込み、餌だけを濾し取って水を吐き出す採食に高度に特化している。
行動特性
複数個体が水面で円を描くように旋回しながら泳ぎ、渦の中心にプランクトンや種子を集めて効率よく採食する「グルグル泳ぎ(集団旋回採食)」が知られる。 越冬地では数羽から十数羽、時に数十羽の群れを形成する。 繁殖期のオスは頭部が光沢のある暗緑色、胸が白く体側から腹部が赤褐色の鮮やかな生殖羽になるが、非繁殖期(エクリプス)はメスに似た地味な褐色の羽衣に生え変わる。 環境省の長期モニタリングでは冬期に減少傾向を示すサイトが増加傾向を上回った種の1つとされる。

狩猟情報

猟期
全国標準は毎年11月15日から翌年2月15日まで。 狩猟者登録された猟区の区域内では毎年10月15日から翌年3月15日までとされる。 猟期・規制は都道府県により異なるため必ず自治体の最新情報を確認してください。
主な猟法
銃猟(散弾銃によるカモ猟が中心。 十番以上の銃器や3発以上装填できる散弾銃の使用禁止など制限がある)、網猟(ムソウ網など)。 わな猟による捕獲は一般的でない。 カモ類は地域により1日あたりの捕獲羽数上限が定められている場合がある。

判別ポイント

オスの生殖羽はヘラ状の大きな黒い嘴、光沢のある暗緑色の頭部、白い胸、赤褐色の体側〜腹部、青灰色の翼の雨覆、黄色い虹彩が揃うため識別は容易である。 メスは全体が褐色で他の淡水ガモのメスと地色が似るが、ヘラ状に前方へ広がる大きな嘴という最大の識別点でひと目で区別できる。 嘴は褐色で外縁が橙色、黒い斑点が入る。 虹彩は褐色、翼の雨覆は灰色。 エクリプス(オスの非繁殖羽)はメスに似た褐色の羽衣になるが、虹彩が黄色い点、翼の雨覆が青灰色である点でメス(虹彩褐色・雨覆灰色)と識別できる。 コガモは全長約35cmと明らかに小型で嘴も細いため、体の大きさと嘴形状で区別できる。 オスの生殖羽とヘラ状の嘴という特徴が非常に明瞭なため他の淡水ガモ同士より誤認リスクは低いが、遠距離・逆光などで嘴の形が確認できない場合は識別に自信が持てるまで捕獲を見送ることが安全策とされる。

人との関わり

農林業・生活被害
農研機構の資料では、麦類・れんこんの加害種としてヒドリガモ・マガモ・カルガモ・オオバンなどが挙げられる一方、ハシビロガモは加害種として言及されていない。 動物プランクトンを主食とする濾過採食者であることと整合的で、農作物被害の面では他の淡水ガモより関与が小さいと考えられるが、単独の被害統計は確認できない。
利用
カモ類はジビエとして利用されるが、ハシビロガモに固有の食味評価や利用文化を示す公的資料は確認できない。
豆知識
和名「嘴広鴨」も学名Spatula clypeata(spatula=ヘラ)も、ともにヘラ状の幅広い嘴に由来する。 複数羽が水面で輪になって旋回する「グルグル泳ぎ」は、渦の中心にプランクトンを集めて効率よく採食するための集団採食行動と考えられている。

出典

  1. 環境省「参考資料2 狩猟鳥獣の保護を目的とした狩猟期間の制限、捕獲規制及び猟法の制限」(取得日: 2026-07-04
  2. 環境省 生物多様性センター モニタリングサイト1000 ガンカモ類調査(取得日: 2026-07-04
  3. 農研機構「鳥獣害 よくある質問(FAQ)」(取得日: 2026-07-04
  4. 三鷹市「ハシビロガモ(嘴広鴨)カモ科」(取得日: 2026-07-04
  5. 日本野鳥の会「BIRD FAN ハシビロガモ」(取得日: 2026-07-04
  6. Wikipedia「ハシビロガモ」(取得日: 2026-07-04

猟期・捕獲規制・都道府県独自ルールは変更される可能性があります。実際の狩猟にあたっては必ず対象都道府県の最新の公式情報をご確認ください。

被害と対策

カモ類(マガモ、ヒドリガモ、カルガモ、ハシビロガモ、ヨシガモ等)による農業被害は主に水田での稲作への影響です。 群れで水田に飛来し、播種直後の種籾を掘り起こして食べたり、成長期の稲穂や青い稲の葉を食害したりします。 また、麦類への食害、牧草地での牧草食害、ゴルフ場の芝生を荒らすこともあります。

年間被害額:約4.5億円(鳥類被害の14%)データ年度:2023年度
出典:
農林水産省「野生鳥獣による農作物被害状況」環境省「鳥獣保護管理基本指針」
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